シンポジウム・レポート

2011年1月31日、慶應義塾大学三田キャンパスG-Sec labにおいて、「電波オークション制度の具体像 ―是非の議論ではなく、設計の議論を―」と題したシンポジウムを開催しました。2010年12月14日に発表された総務省「政策決定プラットフォーム」の「『光の道』構想に関する基本方針(案)」によると、4G周波数の割当は電波オークションを適用するという方針が提示されました。しかし、「電波オークション」の具体的な内容についてはまだ不明確なところが多く、これからの本格的な国民的な議論が求められています。本シンポジウムでは、日本における電波オークション制度導入の具体的な論点や設計要件について議論しました。

パネリスト

池田 信夫 氏 株式会社アゴラブックス 代表取締役、上武大学経営情報学部 教授
鬼木 甫   氏 大阪大学・大阪学院大学経済学部名誉教授
岸本 周平 氏 衆議院議員<民主党>
山田 肇   氏 東洋大学経済学部教授
吉川 尚宏 氏 A.T.カーニー株式会社プリンシパル〈五十音順〉
國領 二郎    慶應義塾大学総合政策学部長※TV電話にて参加

モデレータ

金  正勲     慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 准教授

シンポジウムの前半では、各パネリストから電波オークション制度に対する考えを、それぞれの立場からプレゼンテーションして頂いた。

最初に大阪大学・大阪学院大学経済学部名誉教授の鬼木甫氏が、ICTタスクフォースの700/900MHz帯の「オークションの考え方を取り入れた移行コスト負担の電波法改正」に言及し、オークション制度の採用・不採用を決定することを避けたままで、「オークションの考え方を取り入れた制度」を創設するということはあり得ないと発言した。

次に株式会社アゴラブックス代表取締役で上武大学経営情報学部教授の池田信夫氏は、2月8日に閣議決定される予定の電波法改正案では、「オークションの考え方」が全く取り上げられていないことに言及した上で、このまま法改正を認めてしまうと、900MHz帯だけでなく、700MHz帯までもがこれまで通り、総務省の権限で割り当てられることになってしまうと発言した。

A.T.カーニー株式会社プリンシパルの吉川尚宏氏は、電波オークションの制度設計に関して、1.電波帯の再編に伴うコストを誰が負担するのか、2.入札対象とする権利は何なのか、 3.既存利用者の移行に要するコストを何で支給するのか、4.入札価格と移行コストの差分を誰が取得するのか、という4つの論点について発言した。

東洋大学経済学部教授の山田肇氏は、電波オークションを導入することによって、総務省にはオークションにかける電波帯を発掘することに関わる権威が生まれると述べた。また、山田氏は電波オークションを実施した場合に、落札額が高騰するという考えは幻想であると発言した。

 

民主党議院議員の岸本周平氏は、閣議決定やタスクフォース決定がありながら、今国会に提出される電波法の改正案では、700/900MHz帯においてオークションの考え方が導入されないことになったと述べた上で、第4世代移動通信については、オークション導入の検討を確実に進めていく必要があると発言した。

慶應義塾大学総合政策学部長の國領二郎は、テレビ電話を通じて、電波オークションを実施する場合、その目的は最適な事業者に電波を割り当てることにあるべきだと述べ、オークションによって電波を割り当てられた事業者は電波の利用に必要な料金を税金として納入すべきだと発言した。

シンポジウムの後半では、各パネリストからのプレゼンテーションを受けた上でのそれぞれの考えを発言して頂いた。

まず、電波オークション導入の目的については、山田肇氏が事業者のイノベーションを促進することに最大の目的があると述べ、鬼木甫氏は事業者の新規参入を促し競争を活性化することによって製品やサービスの質を高めることに目的があると発言した。

次に、オークション制度の内容については、吉川尚宏氏が電波オークション制度は周到に設計しなければ落札額が高騰する可能性があると述べ、池田信夫氏が電波再編を早期に実現するためには逆オークションを実施することが有効ではないかと提案した。

そして、電波オークション制度の設計構造については、岸本周平氏が総務官僚は電波オークションの実施によって、現状では特定財源のように利用できる電波利用料が、完全な一般財源化することを懸念していると説明した。

最後に慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科准教授の金正勲は、制度設計の問題に素早く対応していくためには、制度の導入目的、内容、設計構造について意識した上で、予め議論を蓄積しておくことが重要だと発言した。

 

(文・川村真哉)
開催:2011年1月31日 18:30-20:45
於 慶應義塾大学三田キャンパス 東館 G-sec lab