シンポジウム・レポート

2010年4月8日、慶應義塾大学三田キャンパスG-Sec labにおいて、「日本にオープンガバメントの実現を!」と題したシンポジウムを開催しました。近年、ICTの活用による政治への市民参加、選挙での情報共有、行政サービスの満足度向上などは世界中で大きな課題となっています。特に米国のオバマ政権では、大統領選の選挙活動のみならず、政権獲得後もICTの可能性をフルに活用することによって、よりオープンで透明な、そして市民参加や協働を促す施策を積極的に推進しています。一方日本でも新民主党政権下において、選挙におけるインターネットの活用や開かれた政府といった、一連のオープンガバメントへの取り組みが進められています。本シンポジウムでは、政産官学のキーパーソンと共に諸外国の事例を踏まえ、日本でのオープンガバメントの在り方について議論しました。

パネリスト


石井登志郎 氏  民主党・衆議院議員
大井川和彦 氏  マイクロソフト執行役常務
奥村  裕一 氏  東京大学公共政策大学院教授
柿沢  未途 氏  みんなの党・衆議院議員
藤田  憲彦 氏  民主党・衆議院議員
山崎  富美 氏  フリージャーナリスト

國領  二郎    慶應義塾大学総合政策学部長

モデレータ

金   正勲     慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科准教授

シンポジウムの前半では、各パネリストからオープンガバメントに対する考えを、それぞれの立場からプレゼンテーションして頂いた。

最初に、フリージャーナリストの山崎富美氏が、アメリカではオープンガバメントの3原則(透明性、国民参加、官民連携)に基づいて、政府が公開したデータを官民が協働して分かりやすく加工し、その情報を国民に理解してもらった上で、行政活動に参加してもらうことを促していると説明した。

続いて、マイクロソフト執行役員常務の大井川和彦氏は、同社によるアメリカのオープンガバメント3原則に対する体系的な支援について説明した上で、日本版オープンガバメント実現のためには、新たな情報技術を積極的に活用して、国民が政府の政策を評価しやすいものにすることが必要だと提言した。

東京大学公共政策大学院教授の奥村裕一氏は、日米におけるオープンガバメントの推進状況を、データを以て比較した。奥村氏はここで、アメリカと比較して日本では民の政策提言能力が低いことを指摘し、この問題を解決するためには、政府が積極的に一次データを公開し、そのデータを分析する中で国民が考える力を身につけていくことが重要だと述べた。

民主党・衆議院議員の石井登志郎氏は、選挙期間中でも候補者や第三者がインターネットを使って選挙活動できるようにするインターネット選挙解禁に向けた取り組みと、Ustreamを活用した民主党のダイレクトな双方向メディア実現に向けた取り組みについて説明した。

みんなの党・衆議院議員の柿沢未途氏は、まず、国会議員としての説明責任を果たすという意図から、非公式の委員会の審議過程をtwitterでつぶやいた結果、その行為が問題となった自身の例を紹介した。その上で、オープンガバメントの進化のためには、国会や政府だけでなく、政党の側も政策立案過程の透明化に向けた努力が必要だと指摘した。

民主党・衆議院議員の藤田憲彦氏はオープンガバメントを実現するためには、まず、政府が議論の結果だけでなく、議論の経過についての情報をアウトプットする必要があるとした上で、こうした情報に基づくアイデアが政府を超えて幅広く議論され、その中で評価されたものを議員がインプットできる仕組みがあると良いと述べた。

最後に慶應義塾大学総合政策学部長の國領二郎がオープンガバメント3原則うち、日本での理解が浅いのが、政策の実行局面における多様な関係者のコラボレーションの部分ではないかと問題提起した。

シンポジウムの後半では、まずコラボレーションの実現という論点について、パネリストからICTを活用してPDCAサイクルを回すことが重要だという主張、社会貢献の意志を持つ人々が政策立案に参加できる仕組みを作ることが必要だとする指摘、政治主導で目標を設定し、コラボレーションでその目標を実現していくことが大切だとする意見が寄せられた。

続いてフロアからは、民の深い参加を引き出すための具体的な方策はあるのか、旧来型のロビイスト的な意見とポピュリズム的な意見はどのように融合させて政治に届けるべきか、という質問や、政府には著作権の処理を行った自由に利用できる情報を発信してほしいという意見が寄せられた。

こうした質問や意見に対して、パネリストからは個別の施策を積み重ねていくことが必要だとする意見、より良い行政を実現するためには、政府と民間の情報の非対称性の克服が必要だとする主張、国民全体でオープンガバメントを育てていく視点が重要だとする指摘が寄せられた。

最後に慶應義塾大学政策・メディア研究科准教授の金正勲は、政治家には国民を主役にするための手助けをしてほしいとした上で、国民の側は政治家に依存するだけではなく、主体的に考えて行動していく必要があると述べた。

(文・川村真哉)
開催:2010年4月8日 18:00-20:30
於 慶應義塾大学三田キャンパス 東館 G-sec lab