シンポジウムレポート

第3回テーマ 「NTT再々編問題はどう決着をつけるべきか」

日本では30年以上に渡り、NTT一社の組織形態について明確な結論を出さないまま、問題解決を先延ばしにしてきました。
またその間の再編議論は、特定の利害関係者の間での不透明な妥協の産物であり、国民利益という視点が不在した中で生まれたものであると言わざるを得ません。シンポジウムでは、主に競争やイノベーション促進、そして国際競争力強化という観点から、今後のNTTのあるべき組織形態について議論しました。

概要

開催日時:11月26日(木)18:00-21:50

パネリスト:
池田信夫氏 (上武大学大学院経営管理研究科教授、SBI大学院大学客員教授)
佐々木俊尚氏 (ジャーナリスト)
関口和一氏(日本経済新聞社編集委員兼論説委員)
國領二郎氏 (慶應義塾大学 総合政策学部長 )
中村伊知哉氏 (慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 教授)
岸 博幸氏 (慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 教授)

モデレーター:
金 正勲氏 (慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 准教授)

司会:
折田明子氏(慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 講師)

※議論はTwitterで要旨を中継。#gie2009 で検索可能。

-----------------------------------------------

ディスカッション

■NTT再々編問題で今、議論すべきこと
■日本の成長戦略と情報通信サービス業
■NTTは誰を見てきたか
■ガラパゴス化と国際競争力

■NTT再々編問題で今、議論すべきこと

金氏:三部作シリーズも3回目。岸さんが少し遅れるのでまずはこのメンバーでスタート。NTT再々編問題は30年近く決着が着いたようで着いていない。まずは池田先生に約10分お話をしてもらい、その後何がイッシューなのかをディスカッションする。

 

池田氏:私自身、NTTに対しコンサル業務をしたことがある。今は全く関係ないが、完全に中立の立場ではないことをお断りしておく。
元々は中曽根内閣の第二臨調、土光さんの頃にNTTを分割民営化するという答申が出た。NTT、当事の電電公社は労使一体で反対した。結局、民営化はするが分割はしないということで、NTTになった。3年後には見直すということになっていた。
92年の見直しの際は、政府側が、当時の長距離通信網を分割しなさいという話を出してきた。NTT側は、長距離会社を分割しないかわりに、無線を分割する案を出し、決着した。それが現在のNTTドコモで、独立は犠牲的存在だった。当時は、無線ではビジネスは成り立たないと思われていた。今はすっかり変わったが。
97年に持ち株会社化の話を、中山素平さんが臨調に持っていった。99年持ち株会社に。中山さんは、商法改正前にNTTだけ持ち株会社にしてしまった。
その後も再々編という話は出ては消える。原口大臣、内藤副大臣は再々編なんて、という意見のようだ。

佐々木氏:何を論点にするかが難しい。NTTをもう一度分割せよ、という論者がたくさんいるのかどうかは、始まる前の舞台裏でも話題になっていた。
グローバル市場そのものが、国内市場と融合しつつある。i-Phoneが流れ込んできたと時、ドコモのi-modeはどうなのか?グローバル市場で考えた時、日本のNTTはどうなのかを位置づけ直す必要がある。レイヤーで考えると、FTTH、IDSLなど、固定の上にサービスアプリケーションが乗っていた。固定では垂直統合はできず、アプリケーションレイヤーの事業者の自由となる。
しかしNGNは、発IDを持つ。i-modeと同じように、発IDを使ったビジネスを展開すること、垂直統合することが可能となる。しかし現在、NGNはそのビジネスにはなっておらず、発IDは、ナンバーディスプレイ程度にしか使われていない。amazonのIDと結びつける等にはなっていない。
i-modeモデルは、完全に垂直統合されている世界でのビジネス。ドコモという会社は上位のレイヤーに進出する可能性を持っていた。だが、世界では回線は中抜きされつつある。日本では回線とアプリケーションだが、世界では端末とアプリケーション。回線を持っていることが、優位性を持ち得ない方向に進みつつあるのか。NGNが新しいビジネスの可能性を持たない限り、下位インフラ、土管は土管としての役割しかない。
国家として大事にするという話もあるが、NTTにすれば儲からない土管ではなく、上部のアプリケーションに結びつくようなビジネスをしたい、と言うのはあるのでは。国際市場を考えるとそれが議論になってくるのでは。

関口氏:NTTの問題だが、見失ってはならない点が2つある。ユーザーのためになるのは大前提として、1つは新しい技術の発展を阻害しないこと。2つ目は国際競争力を落とさないこと。過去の再々編論議の過程では、この2つを見失ってきたように思う。
元々78年に、カーター政権から規制緩和が始まった。サッチャーやレーガンのサプライサイド政策でそれが進んだ。ジャッジ・グリーン判決が82年。独禁法でAT&Tの分割を決定した。84年にリージョナルベルができた。
日本では、99年に実際の分割が行われるまで、14年の歳月がかかった。その間、インターネットが登場、アメリカを中心に新しいインフラが広がった。日本の総務省の幹部は、NTT再編論議に時間を費やし、技術革新のうねりを見誤った。

今、原口大臣が「日本は周回遅れ」と言っているが、私もそう思う。民営化から分割まで14年。その間、ISN構想やOCN、インターネットを見越した新しいインフラを構築しようとしたが、普及の頃には技術の流れが変わっている。NGNにも若干その兆候がある。そういったことを起こしてはならない。
2つ目の国際競争力の点。オレンジグループやドイツテレコム等のヨーロッパのキャリアは8割方を海外で売り上げている。日本の場合は5%にも満たない。少子高齢化の進む国内市場の中だけでやっていても仕方がない。
NTTは、ドコモで外に出て行こうとしたことがある。しかし戦略が悪く、2兆円も金をすってしまった。国際戦略がことごとくない。一番、見失ってはいけないのは、技術革新を止めない、技術革新を見誤らないこと。それが国際競争力を失わないために大切。

中村氏:NTTの再編が99年。それから10年位たった。私のこの問題との関わりは、役所に入った94年、電気通信局でNTT法と電気通信事業法に関わった頃に遡る。電電公社を知っている最後の世代で、官房では凄まじい調整をさせられたことを覚えている。
今、この議論にはとても違和感を覚えている。もう、国がああしろこうしろという時代ではない。NTTはどうなりたいのかを聞きたい。話はそれからではないか。今のままでいいのか。だとするとNTT法という規正法があり、それがずっと続く。統合したいのか。するとNTTコムやドコモの競争力が削がれる可能性がある。それはどうなのか。放送に進出させろなのか。自らをスリム化したいのか。それが見えない。
今考えなければいけないのは2つ程度。1つは完全民営化。するとしたら、そのための条件は何かを考える時期ではないか。NTT法は特殊法人の設立を定めたもの。特殊法人は国の意思で作るもので、それが廃止されたら完全民営化となる。KDDIは完全に民営化した。昔あった、国際電信電話法は完全に廃止され、特殊法人ではなくなった。NTTはなぜ特殊法人なのか。ユニバーサルサービスと研究開発が、国の建前にはなっている。
組織にさせないといけない仕事があるのか。国として、NTTに研究所を持たなくても、民間や大学の研究開発でOKなら、それでよいと思う。
NTTはまず自分の意思で描いてみるべき。それからが政治の話。落し前が必要なのか、持ち株を統合するのがいいのか。孫さんの言うように、アクセス分離で民営化なのか。
もう1つ、前回もそうだったが、組織論を議論していてもなかなか見えてこない。競争政策としてすべきことを考えた後、組織論に行くべき。競争戦略で議論すべきは、光は是か非か。光ファイバーのNTTのシェアは70%程度。モバイルやADSLに比べると競争がない。次のアクセス網という意味でここを議論する意味はある。
あとは放送と通信の融合。NTTの営業利益は1〜2兆あり、キー局を全て買ってしまうことができる。その力を融合のほうに活かすのか。

國領氏:私は経営学者。経営形態や組織は、基本的に経営判断の問題で、つべこべ外から言うものではない。NTTの経営問題として考えた時、東西で分離、ワイヤーとワイヤレスで分離、県内と県間で分離という現状の組織は技術に対し、最も悪い影響を及ぼしているし、そんな経営形態は早く直したほうがいい。10年前、この議論を死ぬほどやって、私は総務省に出入り禁止になった。なのに、最近は総務省に入り浸り状態というのは、不思議なものだ。
5,6年前に民主党の勉強会に呼ばれ、原口さんや内藤さんがいる前で「99年のNTT再編は2周遅れ」というプレゼンをした。県内県間というのは、まるきり電話のアーキテクチャ。電話は階層構造で、きちっとルートが整理されているが、インターネットはあっちこっちに飛んでいく。そういうネットワークの時代になっている。「86年ならいいけれど、96年にこういう議論をするなよ」と感じていたのを覚えている。
経営判断ではなく、外からやらされたものという意味でもアナクロ。電話のアーキテクチャを想定したもので、前世紀のもの位に古い。キャッチアップをすることは大事。
ただし、完全に経営判断だけでいいか、というとクエスチョン。エッセンシャル・ファシリティとしてあってもいいこと、ただし介入の仕方を今度は考えようね、と思っている。 
まず基本認識はそろえておくべき。完全な競争がしにくい分野でもあるので、ある程度外からの影響が与えられるのはしょうがない。その影響の与え方を間違えてはいけないようにしないと前提として持っておくべきなのは、レイヤー1と2のレイヤーでは競争はあってもいいけど、別に無くても問題ない。競争政策という意味ではレイヤー3できちんと競争が行われること。
ただし、この考え方は基本的にワイヤードの世界。ワイヤレスや宇宙、衛星通信まで同じ考え方が適用可能なのか。いずれにせよ、アドレス体系はすごく大事。
インターネットが古いと言っている人もいる中で、今の電話のアーキテクチャを変える事は必須。今や4周遅れ、せめて1周遅れにはしないと。

金氏:岸先生は竹中懇談会を設計した方だが、あの時から随分時間が経っている。先生ご自身の考え方は。

岸氏: 竹中懇談会の話。あれは、NTTをさらに細かく切り刻もうというわけではなく、競争が何でも一番、と決め付けていたわけではない。基本的には事業者判断だが、今のままは良くないという認識だった。
インフラは儲からなくなっている。産業政策の視点から言うと、成長産業の通信産業をどうデザインするのか。競争政策や振興策の視点や、他の産業への影響を考えることも大事。それからNTTをどうするのか、というのが順序。その文脈において国にやることはまだまだいっぱいあると思う。前提として、通信産業の産業政策をどうするべきか、というのを考える必要がある。国内の需要や市場が縮小していく中、この産業を正しい成長に持って行くのか。
検討委には、私の知恵袋の中村さんにも加わってもらい、それなりの議論ができたように思う。何人かの方が指摘されている通り、NTTの経営問題で、NTTが決めるべきこと。その意味でも、かなりフラット&ニュートラルだったが、今の体制は良くないでしょ、とは思っていた。
竹中懇談会でもNTTをやろうというより、日本はここをブレークしないと駄目だね、と取り上げた。それは今も変わっていない。国がNTTの形態を、というさしでがましいことはするべきではないが、産業政策的な部分も出てくると思う。人口が減少し、国内市場は限界。成長産業にするには外の世界も考えねば。世界的にこの分野は成長産業のはず。その認識の上で、個人的に競争政策自体の考え方も考え直さないと、とは思っている。

ディスカッションTOPに戻る

■日本の成長戦略と情報通信サービス業

金氏:三部作シリーズにNTT再々編も加えたが、組織論の議論が目的ではない。パネリストの方のお話を聞くと、論点はいくつかあるようだ。まずは池田先生から現行のNTT法と、それをどのように変えていくかの話を伺いたい。

國領氏:その前に、少々混乱気味なので少し整理したい。両極端な話になっている。一方は、持ち株を持って、バラバラで再々編。アクセス網を分社化する。もう一方は、東西がもう一回くっつくのを認める。どういう条件なら、くっつくのを認めるのか。両極端な話が一食単になると危ないのでは。


金氏:中村先生が仰ったように、民間企業の場合、企業自体が自分で経営判断で決める。それに対し、國領先生が仰ったように、県内県間、ワイヤレスなど、やろうとしてもできない法的な制限がある。分割をするかの前に、NTTが経営判断をしたところで、自分で自由に出来るような状態ではない、と思っている。そこで池田さんに。

池田氏:20年以上付き合い、飽き飽きしているというのが率直な感想。法律を議論しても袋小路に行く。組織いじりも手段にしかすぎない。問題は、目的は何なのか。過去の面倒な話は忘れ、議論したほうが生産的。
関口さん、岸さんから出た通り、どの党も成長戦略を持っていないことが一番の問題。原資がどんどん小さくなっていく可能性が高いのに、枝葉の所得分配の話ばかりをしている。この問題は、日本の成長戦略に絡んでくる。中国は日本のGDPを抜き、やがてアメリカを抜き、世界1位になる。日本は、皆が貧しくならないよういかに踏ん張るのか。
1つは、中国と競合しない領域、内需でがんばるということ。サービス業はドメスティックな産業のようで、そうでもない。例えば小売業。ユニクロは、パリで行列が出来る。アメリカは今、WTOでサービス業の自由化ばかりいわれる。内需サービスで儲けることで、グローバルに儲けるビジネスモデルを作り出すということができる。
サービス業の中でもっとも有望なのは情報通信サービスだろう。グローバルな情報通信市場で競争できる事業者が出る。そのための設計はどうすればいいか。国内の競争だけを見ていても駄目。NTTではなく、ソフトバンクが進出してもいい。日本の通信サービスが、アジア、中国でどこまで張り合っていけるか。
グローバルに見て、日本の通信サービスは全くお呼びでない状況。長い目で見ると、これが日本の成長を阻害するのでは。結論から言って、NTTの組織いじりは意味がなく、規制は、2周3周遅れの話。業法、会社法というのが残っていること自体がナンセンスなのに、一般的な法律で規制していく仕組みかない。

金氏:アジアを含め、世界の中で日本の通信会社のプレゼンスはほぼゼロ。それはなぜか。

池田氏:やっぱり慣れていない。アフリカではノキアが無線局から何から丸抱えし、このキャリアを持て、と展開している。他に唯一進出しているのが華為。日本のキャリアは、NTTがバブルの時、ちょっとやっていたが懲りてしまったようだ。


岸氏:池田先生の話に真実がある。JALのアプローチも、NTTを考える時に大事だろう。アジアの空は、世界で一番の成長市場だが競争は厳しい。日本はどうするのか。どの産業もそうだが、航空産業も同じで、座席はすくない。ヨーロッパでは、ブリティッシュエアウェイ、エールフランス、ルフトハンザの3つが残った。アジアの市場では、キャセイにシンガポールに…日本の座席はもうないのかもしれない。JALは再生の方向だが。
航空業界より成長産業の通信業において、アジアで駄目なのはなぜか。

関口氏:通信産業の特性というものがあると思う。日本がそれなりに頑張ったのは、機械、繊維、家電。機械の中でも自動車は、つい最近まで世界の首位を取れた。これらは、アナログの技術が基本になっており、製品としての手離れが良い。いいものを作ればどこでも売れる。しかし通信は、ネットワークと端末が切っても切れない関係にある。通信に対するレギュレーションがかなり影響する。アナログの時はまだ良かったが、デジタルはプログラムが摘み上がった世界。かつてのように部品を積み上げて売るのでは取りにくい商品。国内の通信機器メーカーにとって最大のお客さんはNTTグループ。通信サービス自体がグローバルな市場に乗っ取ったものを国内に作っていけないと不可能では。

中村氏:NTT法。法人を縛る法律には条件があり、僕はそういった法律はいらないと思っている。NTT法の基本は基盤と先端。基盤は全国あまねく、のユニバーサルサービス。もうこれで良いのか、それとも光のような新しい基盤を普及させるのか。先端は、研究開発。民間、大学で出来ているのか。そうであれば、事業仕分けで簡単に切らずに…

佐々木氏:中村さんの仰る通り。だが現状、NTTは戦略を描けずにおり、通信市場での競争政策から抜け出していない。固定系音声の市場はゼロサムゲームで、決まっている通信回線の取り合い。そこに、公正な競争を持ち込むとすれば、KDDIやソフトバンクとも分け合いましょうとなる。しかし今、主軸は上のレイヤーに移ってきている。プラットフォームから上位レイヤーに向かって市場が拡大しつつある。無限に上に拡大する可能性があるオープンな所で、どうやって競争するのか。
NTTが、オープンで公正な市場をつくりましょう、ということ自体が間違っているのでは。國領さんの主張には若干異論がある。この10年を見ると、ビジネスは、最初に垂直統合があり、その後にオープンプラットフォームになる流れで起こっている。
NGNでも垂直統合を認めると、かなり強いビジネスが生まれる可能性もある。巨大な垂直統合モデルをNTTが生み出し、オープンプラットフォームに出て行く、Googleがグローバル市場でやっているような成長が描けるかもしれない。

國領氏:議論を正確に行うための質問。Appleのようなものを垂直統合というのか。

佐々木氏:Appleのi-Tunes、i-Podは音楽配信における垂直統合モデル。i-Tunesはやがてプレイヤーは何でもいい、とMP4にも拡大。垂直統合からプラットフォームに移行した。

金氏:今、仰っているのは上のレイヤーでの垂直統合。インフラのレベルでの垂直統合がオープンになっていった例はあるのか。

佐々木氏:それはない。

國領氏:Appleみたいなものは、間をインターネットでつないでいる。

佐々木氏:回線、端末、アプリケーションがある。日本のドコモは回線とアプリケーション。i-Phoneの場合は端末とアプリケーション。だが、3つのレイヤーを垂直統合しているというモデルの上では変わりないのでは。

池田氏:とちらが絶対良い、というのはない。事実認識として、NTT論争をしてきた人たちは、NTTが圧倒的な勝ち組で、他の業者をなんとかしてやれ、という論調。しかし、世界のマーケットでみると、NTTも負け組。JALのような運命を辿る可能性もある。スパコン論争も認識が間違っている。日本のITゼネコンは、皆が負け組。

金氏:一番センシティブな問題となった。NTT法を撤廃し、完全民営化するのか、何らかの方法で変えていくのか。その次に、ユニバーサルサービスの問題やR&Dの問題がある。事前規制か事後規制か。恒常的な措置を入れるのか。

池田氏:一般論としていえば、会社法で規制するのは全くもって悪い。レイヤーに応じてインターネット規制をするのが一番いい。問題はむしろ、総務省の上層部を含め、情報通信法は、もういいんじゃないとなりつつあること。

金氏:そのあたり、規制政策のあり方について後でコメントいただきたい。

中村氏:次のネットワークの設備競争をどうするかが最大の問題。シンガポールは光アクセスの構造分離を行っている。

岸氏:鉄塔をたてるのと違い、経済の体力が落ちているときに、ファイバーをひくのは難しい。インフラは儲からないという話もある。シンガポールのように国として税金を投入してやるのもありかも、と個人的には思うことがある。設備競争といった時に、どこまで政策で押すべきか。

國領氏:非常に重要な論点。この国の次の基盤を一体どういうものにすべきで、それをどういう体系で行うか、の話。ワイヤードでもワイヤレスでも良いというのが、IPの一番いいところ。そうすると、光だろうとなんだろうと、何でも良い、と思う。

池田氏:経済学者にアンケートを取ると、プラットフォーム競争がベストという答えがほとんどで、NTTに全く依存しないインフラが理想となる。携帯電話はNTTに依存せず、競争ができる。有線のインフラの場合は、歴史的事情があってできない。しかし無線で100MB、200MBが出れば、NTTは自由にしてあげる。その代わり、無線の帯域をたくさん取れば、というのが僕の理想論。
光ファイバーは信頼性を考えると、業務用には必要。一般ユーザーは無線でいい。ミッションクリティカルはFTTH、という棲み分けを考える余地はある。

ディスカッションTOPに戻る

■NTTは誰を見てきたか

関口氏:議論が拡散しつつある。今日のテーマであるNTTの再々編に戻りたい。なぜ再々編なのか。うまくいっているならやらなくていい。いっていないならやらなければ。
NTTを自由にする、と皆さんは仰るが、それはおかしくないか。NTTは民間企業であり、外資もたくさん入っている。自由にする、というマインド自体が間違ってはいないか。3割を政府が持っており、政府が何かを言ってくるというのも真実だが、出資者としては当然のこと。
直近でいうと、竹中大臣の時。政府与党合意の際、再々編が議論になった。NTT側からNGNのインフラについて、もう少し様子をみてほしいと提案がなされ、そこまで言うのなら、と2010年を期限とすることになった。このコミットメントは、規制を逃れるための口実という面もあった。結局目標を達成できず、期限延長をしている。この経営体質が問題なのではないか。
事業会社と持ち株会社があり、どちらも責任を取らない。責任不在のまま、海外で大枚をはたき、そのツケを国民が支払った。責任不在体制をなんとかする、というのが再々編の必要性に対する私の意識。

金氏:ごもっとも。しかしここ数十年、NTTもKDDIもソフトバンクも、ユーザーではなく政府と政治を見て事業をしてきた。この原因の一端はNTT法の存在では、というのが私の問題意識。

関口氏:ユーザーではなく政府を見ている、というのはその通り。なぜそうなったかと言えば、我々が「政府が色々いうからそうする」という体制に、してしまったのではないか。東大の高橋洋さんが「イノベーションと政治学」という本を出した。副題は「情報通信革命"日本の遅れ"の政治過程」。ミクロ的に見ると、当時、NTTは独立組織で元気がよかった。郵政省にしてみれば、それを鼻持ちならない、何とか自分のところに押し込めたいというのが、隠れた狙いだった。NTTが総務省や郵政省を見るようになってしまった。なんとかしなければ。

佐々木氏:池田さんが仰るとおり、土管は土管。だが、FTTH、無線、NGNなど、全てプラットフォーム化する可能性はあるのでは?i-modeは単なる土管をプラットフォーム化したもので、成功例。NGNにもそうなる可能性がある。土管を土管として考えるのではなく、プラットフォーム化する可能性があるか、ビジネスとして検証する、というのもありだろう。

池田氏:インフラがどうかの問題ではなく、NTTでは一番優秀な人が政治部に行き、ロビイストになる。本当であれば優秀な人は経営に行かねばならないのに、ロビイングの利益が大きい。だからそこに行く。
問題が物凄く政治的だと皆思い込んでいる。政治を見ながら経営の方向性が決まる。NGNもその典型で、統合・再編を避けるという政治目的のためにNGNという技術を持ち出すような、全く逆の思考過程の人たちがいる。
日本が衰退していく可能性がある中で、やはりイノベーションを起こしていかなければならない。新しい試みをする人が必要となる。NTTは非常に縛られており、その周りにITベンダーがぶらさがる。電電ファミリー以来のこの構造で20、30年やってきたが、行き詰まっている。この構造を変えないと立ち直れない。

関口氏:日本の通信産業は世界的に見てとても変わっている。ある大学の講堂に皆が集う。リストには、総務省、通信産業の人がずらっと並び、ライバル者の社長は皆NTT出身者。和気藹々とした護送船団方式。孫さんが風穴を開けたが、最近は、ファミリーに入ることでのメリットを享受しつつある。総務省を頂点にしたファミリーは、簡単には崩せない。アメリカや他の国は競争アプローチで入ってくる。日本もやり方を変えないと、このファミリーピラミッドは壊せないだろう。

池田氏:NTTというとインフラの話だというのが問題。本質はイノベーション。日本の単純労働者の賃金は中国に近づいている。日本に何が残るのか。中国人にはできない内需型のサービスか。金融は全滅、ITも全滅間近か。だとすればこれから何でいきていくのか。非常に深刻な問題。IT産業を支えるNTTが作ってきた産業構造をどう変えていくのか。それが非常に大事。

金氏:ここで会場から、慶應大学の井出先生に。本来ならパネリストとして登壇いただきたかったが、ご意見を伺いたい。

井出氏:パネリストの意見を聞き、言いたいことはたくさんあるが3点だけ。
1つ目は中村先生が仰った、NTTの研究開発に国が責任を持つかどうかの問題について。AT&Tを分割した意味は何だったのか。現在の通信会社は研究開発していないが、Google、Appleがやってくれる。通信事業者がやる必要はないのでは。
2つ目は、オバマ政権の報告書で、パブリックコメントが求められている。NTTは一生懸命やっている、というのがアメリカの評価。光ファイバーの開放義務をNTTに課したが、投資のインセンティブはマイナスになったにも関わらず、全く影響がなかった。それをどう評価するか。ヨーロッパ、アメリカを比較すると、ヨーロッパには非常に厳しい規制があり、投資も活発でない。アメリカは規制を撤廃してきた。規制によって設備投資は当然影響を受ける。
3点目、今日のパネリストには、規制強化という意見はなかった。池田さんの言う通りNTTが負け組だとしたら、今までの情報通信政策は間違っており、総務省は反省すべきと思う。國領先生が言われたように、電話という古いスキームの中で捉え、NTTは強い、それを弱体化しよう、としてきた通信政策は反省すべきでは。
竹中大臣のときは、NTT規制を強化すべき、ということだった。2010年にNTTのあり方を考える際は、もっと自由にし、固定と通信の融合や、様々なサービスへの進出を行うべきだ、国際戦略強化がこれから方向だろうと思っている。
本日のパネリストの意見を聞き、そんな印象を持った。

金氏:今のコメントについて、パネリストの皆さんの意見を聞く前に2つ質問したい。日本は光に対する開放義務を課したが、NTTは研究開発を続けた。なぜなのか。もう1つは、NTTは負け組である。そして、日本全体が負け組になる。その関係性がわからないのでお話いただけないか。

井出氏: NTTの改革によって、消費者サービスという観点から、規制というものを考えるべきだと思っている。消費者は、シームレスなサービスを受けるべきだというのであれば、そういった仕組みで規制を考えるべきだと思う。
今まで、NTTを弱体化させることで、イコールブッキングという形で、競争を図ってきたという印象がある。NTTを再編し、どんなメリットがあったのか。色々な事業者から選択できるという点はあった。しかし、アメリカの分割に比べると、NTTの再編と弱体化は、情報通信サービスの後退を招いたと思う。池田先生の言う、負け組になったのでは。

関口氏:アメリカ政府が民間に対して言ったのは、逆の話で、アメリカのキャリアは光をアンバンドルし、NTTはアンバンドルしたが研究開発を行った、という話ではなかったか。

池田氏: NTTに開放義務を課したという点で、アメリカの評価は高い。NTTの開放義務は、世界の中で唯一機能した。

関口氏:アメリカではフェイズが変わった。独禁法政策だが、アメリカはあるエリアでの寡占度が高ければ縛ってきた。かつては、国内市場で見てきたが、グローバル戦略に切り替えた。国内で寡占であっても、世界的にみて寡占でなければ問題ではない、と。アメリカ国内で寡占化していても、グローバルで競争に勝ち、国内に利益を還元すればいい、と流れが変わっている。その発想が、国内のNTTの議論にはすっぽり抜けている。

國領氏:光の開放義務は、決してNTTの弱体化政策にはなっていなかった。設備投資額を回収できるような水準で開放していた。佐々木さんのプラットフォーム論に繋がるかもしれないが、理想を言えば、色々な会社にプラットフォームを使ったサービスをしてもらうのがいい。競って色々な人が投資し、収益があがっていくことと、矛盾しない。
むしろ今考えるべきは、一回作ってしまった設備投資をどれだけ何度も使って、そこから収益を上げる体制や状況を作ってあげられるかということ。光ファイバーも、地域によっていろいろで、方式が違っていたり、全く使われなかったりしている。
重要なのは、少なくともある経済原理に従って引いた設備に色々なデータを乗せて収益を上げることを議論すること。竹中懇談会も、前提には通信放送融合があった。その前提なら、ばらした方が上手くいく可能性もあった。
投資インセンティブを回収できる設計、投資が収益を生み出す構造を作ること。そうすれば、開放義務と設備投資意欲が矛盾しなくなる。

佐々木氏:NTTを再編した時、何を考えていたのか。本当は、安価なインフラを使い、新しいサービスを興す企業が生まれ、イノベーション起こすことが求められていた。しかし出来なかった。ハードベンダーは死屍累々、サービスは国際展開ができない。
NTTの味方をしているわけでは決してないが、その中においてNTTは資金力があり、イノベーションを起こしうる唯一の存在なのかもしれない。そういう意味で、ビジネスの世界に出てきてほしいとは思っている。

ディスカッションTOPに戻る

■ガラパゴス化と国際競争力

金氏:日本の端末メーカーと携帯キャリアの関係性で、ガラパゴス化が起きて勝負出来なかったのではないか。佐々木さんの話とは反対では?

岸氏:佐々木さんに賛成する部分がある。政策に目的は必要だし、産業政策には強いプレイヤーが必要になる。消去法でいくとNTTは大事なプレイヤーだと思う。産業全体を見回して、発展しそうもないところばかりとなると、現実的に考えなければ。
ガラパゴスについては、中途半端に進化できなかったから生き残れなかった。これはNTTがどうこういうよりメーカーの問題では。1億2000万の国内市場である程度収益が取れ、それで満足してしまった。海外市場をやっていれば違っていたのかもしれない。これを全てNTTの責任とするのは違うのでは。
総務省の通信政策が間違いだという話があったが、経産省の政策も全て失敗している。NTTは政策に振り回されるが、総務省や経産省も気の毒ではある。族議員などの政治家の思惑がいっぱい絡んでいて、結局、たいしたことができない。それがリアリティ。
消去法で使えるプレイヤーに強くなってもらうしかない。もしくは死ぬほどやりますというプレイヤーに頑張ってもらうことが、産業政策、振興政策。もう時間はない。

中村氏:総務省は反省すべきだが、実は結構、反省はしている。情報通信法を提案した時、あれが通るとは思わなかった。改革しようという人が出てきており、良い方向に動いていたと思う。
情報通信法のポイントは、レイヤー別に整理をし直すことのように見えるが、その中で大幅な規制緩和をやろうというのが狙いだった。福岡のユビキタス特区でやっているような実験をどんどん可能にする、という趣旨だった。確かに、コンテンツの規制が強くなるのでは、という議論はあったが、前に進もうというところで合意は取れていた。しかし議論が止まってしまっていては意味がない。少しずつ前に進もうとはしている。それほど悲観はしていない。

金氏:ガラパゴスについて、中村先生はどう考えておられるのか。

中村氏:法律は10本ほどある。一本化していこう、という提案。抜本的な見直しの機会だからこそ、バラバラな手続きを一緒にしようと考えていた。
福岡のユビキタス特区は、ハード分離のビジネスモデルだが、それは特区だからできている。これをもっと出来るようにしていきましょうという趣旨。
今よりコンテンツに対する監視規制が強化されるのではないか、という議論はある。そこで妥結し、一歩でも前に進むというのが大事なこと。一歩も動かなければ、マーケットは海外に取られる。前に進んでいこうという動きがある。僕自身はそんなに悲観はしていない。この政権でできることをすればよいと思う。

金氏:会場から1つ2つ質問を受け付けたい。

質問者1:NTTにはイノベーションを起こせる可能性がある、という話。私から見るとイノベーションから一番縁遠いのがNTTのように見える。

佐々木氏:組織としては仰る通り。しかしWEB業界にはNTT関係の出身者が多い。

國領氏:やめると活躍する。

佐々木氏:資金力、技術力もある。しかし組織としては駄目。

池田氏:イノベーションという話が出てきた。全体を通して一番大事なのは、イノベーションだと思う。日本が衰退過程に入る中、小さな衰退に止める、衰退を食い止める、そのためには、民間の人が、自発的にイノベーション起こせるような制度設計が必要になる。インフラや組織いじりは、あくまで手段。スパコンも手段。日本は何で食っていくのかを、もう一度捉え直すべき。

岸氏:池田さんと同じく、時間がないと思っている。事業仕分けをしている間に、世界で日本が仕分けされつつあることに間違いない。本当に時間はない。ネットベンチャーでできるところはない。現実的なオプションとしてNTTという意見はある。株価は来年にはとんでもないことになるだろう。僕は本当に時間がないと感じている。

佐々木氏:岸さんとほとんど同じ意見。成長戦略というかビジョンというか、そういう認識を持った人が政治のサイドに一人もいないというのは絶望的な状況。ここでの議論が突破口になればと思っている。

関口氏:僕も成長戦略がいちばん大切だと思っている。新技術、新市場の両方を開拓しないと成長戦略は描けない。日本はかつては家電と自動車があった。家電は駄目になり、自動車も黄色新語がともりつつある。
最低二本柱が必要。自動車とITは海外に出て行くべき。日本のIT,業界は巣ごもり状態で外に出ていけていない。マインドセットし変えていかねば。そのための政策。

中村氏:NTTにやってもらいたいことはたくさんある。NTTテレビ、NTT銀行、NTT幼稚園など、ぜひ作ってほしい。今日はこういう場なので気楽に議論できる。しかし、責任持って、しっかりやるところは?と問われたら、総務省のタスクフォースになる。その審議員である、関口さんや岸さん、國領さんには、ぜひ頑張っていただきたい。

國領氏:イノベーションは大事。今求められるイノベーションが上位レイヤーにシフトしていることも事実。しかし、同時にインフラも重要。コストとパフォーマンスの両方において一番よいインフラを持つことで、新しいアプリケーションを持ちたい、色々な人を世界から呼び込んでくることも可能ではないか。
この国のことを面白いと思てくれる人はいる。伊知哉さん的な世界、コンテンツ、サブカルなどに興味を持っている人はまだいる。モバイルの色々なツールを使いながら、新しいアプリケーションを開発する。大事なのは、この国が基盤的インフラにおいても、ユーザーリテラシーにおいても、高い水準にあること。日本限定のオーバースペックなインフラではなく、次の時代のモデルとなることを目指すべきでは。
伊知哉さんが、あれだけエネルギーを使って作ってくれたものがある。それでがんばれば、NTTは経営問題で済む。

関口氏:この国から、と言った意味では、Nokiaが日本での研究開発から撤退したことが非常にショックだった。この国に先進的なモバイル技術・環境がないという事を言われているに等しい。そこをもっと考えるべき。

金氏:3部作は今回で終了だが、年明け以降、新たなシリーズを予定している。なお、GIEというのは、Global Internet Economyの略。慶應の中に、研究所になるのかどうかはまだわからないが、来年夏のキックオフを予定、そこにひとつのプラットフォームを作る。3部作はひとつの前哨戦としてやっている。
難しい問題に巣晴らしい知見を提供してくださった皆さんに拍手。

ディスカッションTOPに戻る