シンポジウムレポート

第2回テーマ 「独立行政委員会(日本版FCC)は創設すべきか」

日本のIT政策の政策決定プロセスには、透明性、専門性、説明責任といった観点で改善すべき課題が山積しています。特に、あるべき政策決定主体の在り方において、現行の省庁主導の体制に対し、独立行政委員会(通称、日本版FCC)構想が代案として浮上しています。
今回は、日本の情報通信行政に独立委員会制度を導入することへの意味や期待される効果について諸外国の事例を踏まえて議論しました。

概要

開催日時:11月19日(木)18:00-21:50

パネリスト:
池田信夫氏 (上武大学大学院経営管理研究科教授、SBI大学院大学客員教授)
佐々木俊尚氏 (ジャーナリスト)
國領二郎氏 (慶應義塾大学 総合政策学部長 )
中村伊知哉氏 (慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 教授)
岸 博幸氏 (慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 教授)

モデレーター:
金 正勲氏 (慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 准教授)

司会:
折田明子氏(慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 講師)

※議論はTwitterで要旨を中継。#gie2009 で検索可能。

-----------------------------------------------

ディスカッション

■日本版FCC(独立行政委員会)は創設すべきか
■大切なのは「国のかたち」
■振興と規制は切り分けられるか
■ビジョンと中立で具体的なアーキテクチャの重要性
■技術の進化と省庁の役割

■日本版FCC(独立行政委員会)は創設すべきか

金氏:個性あるメンバーが集まっている。本日は最初からディスカッションでいく。対立軸を作り、論点を明確にしていきたい。最初に、独立行政委員会を創設すべきかについて。

池田氏: 5年ほど前に遡る。民主党の某議員から日本版FCC法案のドラフトをもらった。その際、周波数オークションの話もあった。法案は国会に出たが話題にならなかった。当時FCCがないのは韓国と日本だけだった。「ないのは恥ずかしい」というだけで、なぜ必要なのかについて答えは返ってこなかった。よくわからないという意見に今も変わりはない。

岸氏:FCCについては、池田先生と近いことを感じている。原口大臣は野党だった昨年「情報通信政策私案」を出し、情報基本法の確立等を唱えた。総務大臣になってからもそのような議論を行っているが、内藤副大臣の発言は若干ニュアンスが異なる。意思統一がまだ取れていないのだろう。FCCを作る時に重要なのは、どのような機能を持たせ、全体の位置づけがどうなるのかという点。無碍に否定もしないが、今のところわからないな、という感想を抱いている。情報通信・コンテンツを考え、総務・経産・文化の3省庁と内閣官房の全体の再編成を考えて作るのであれば、意味はあるだろう。

佐々木氏:そもそも議論のスタート地点がよくわからない。原口さん達はチンプンカンプン。だからといって、アメリカのものを持ってくるというのもスタート地点にはならない。政治から独立した組織をもつのは悪いことではない。しかし、このままで独立したものができるのか。仮にFCCを作るのであれば、どの程度の権力を持ち込むのか。BPOに留まるのか、電波の割り当てにまで踏み込むのか、それとも総務省の通信放送行政そのものを引き剥がすところまでやるのか。民主党はどこまでを考えるのか、どこまで議論していいのか。

中村氏:FCCの議論をするとアウェイ感がある。ここはアウェイかホームか、会場の皆さんに聞きたい。「賛成の人・反対の人・どっちでもいい人」(会場挙手)。そう、僕もどっちでもいい問題だと思っている。
ちょっとプレゼンしたい。融合と規制緩和とソフトパワーを実現すべきだと思う。その意味では民主党の政策はよくできている。
しかし一点だけ「日本版FCC」と書いてある。規制分離した組織を作ると3つ悪い方に行く。「官僚主導」「規制強化」「二重行政」だ。1つ目の官僚主導。政治からの独立が本当に良いのか。なぜ情報通信だけそれを許可するのか。2つ目の規制強化。放送の内容に対しアメリカでは多額の罰金が課せられ、フランスや韓国では番組が打ち切られる。そういう方向に行きたいのか。日本は今まで行政指導しかしたことがない。3つ目は二重行政。振興と規制をどう分けるのか。総務省は振興と規制を行っているが、2つの役所に分かれたら、同じ問題を2つの所で対処することになり、行ったりきたりになる。規制緩和は停止する。これ以上縦割りを増やすのか。
原口大臣が言うFCCはスキームが異なる。放送の規制を監視する機関で、オンブズマンのようなもの。通信は無関係。しかし日本の放送番組の規制は、総務省の行政指導のみで、年に1、2回程度発動される程度。それが大事な話なのか。
総務省の行政監査機関を政治から独立して作るという話ならわかる。放送に政治が介入するのが悪いのなら、放送法を直せばいい。ハードとソフトの分離であれば、電波を止めればいい。
僕は、組織、行政に問題があるとしたら、縦割りであることだと思っている。ユーザー団体、民間事業者が困っているのはこちら。それを融合し、文部科学省、文化庁を巻き込んだほうが、組織設計としては簡単ではないのか。それさえも先の話だとも思うが。

國領氏:組織いじりは好きではないが、あえて問題提起したい。なぜそうした声が上がってくるのかについて、ある程度のセンシティビティを持つことが大事ではないか。リストアップしていくとリソースアロケーションの話がある。総務省がコンテンツに介入したがっているとは全然思わないが、関係のないところで、電波の免許の話などに波及する。1つの組織の中にあると、チェック&バランスが効いていないのでは、と思う。

比較的近いところで見ているので分かるのだが、こんな簡単な話をきちっと仕切っていかないと。2011年の後、電波や通信放送融合のサービス、クラウドとネット中立性となった時、どういう仕切りでリソースが配分され、紛争が解決されるのか。おそらく3年後はそれで忙しくなるのでは、と何となく見えているが、戦いが始まってから行司を決めるのは大変。今のうちに、きっちりコンセンサスを取ることが必要。議論の結果、別にいいんじゃない、となったとしても俎上に乗せる価値はあると思う。

金氏:今回の趣旨は日本版FCCの共通のイメージが掴めていない、というところ。民主党・原口版のFCCを議論する価値は感じない。むしろ問題の本質について話したい。 原口版と内藤版の違いについては、5分程度で。

岸氏:直接聞いたわけではないが、原口さんは言論の自由を大事にし、内藤さんはよりアメリカのFCCに近いものを考えているのではないかと思う。これから行われる研究会の様子を見ていきたい。どこまで重要なのかはともかく、にべもなく否定するのはどうか。FCCにこだわる必要はなく、総務省に限定せず組織形態を見直すべきだとは思う。原口大臣も内藤副大臣も考え切れていないのだろう。

池田氏:日本版FCCは省庁再編の時に一度出た話。独立委員会を作り郵政省を取り潰す、というすごい案だったが完全に潰れた。郵政省は総務省と一緒になり、通産省は名前が変わっただけだった。10年前の話を蒸し返すのであれば、面白くない。行政全体の方針として振興と規制を分けるというのでは足りない。まず目的があり、そこにどういう組織が適しているかという話をすべき。幹の話からしたい。

岸氏:行政全体の方針として、規制と振興を分けるかどうか、という議論なしにFCCだけというのはどうか。経産省にはFCCや電波オークションを仕掛けて旧郵政省の力をそぎたいという意向があるような気がする。

佐々木氏:政局の話に巻き込まれず、本来に立ち返るべき。情報通信法は来年の提出が見送られそう。こうした話が、政局として不透明に伝わるのが問題。総務省をブラックボックス化させる。決定された政策に対して何を民放連が言うか、透明化の議論を起こすという意味はあると思う。中村さんが言うように、中途半端にやるなら、二重行政の問題も起こるのだろう。文化省構想をまるごと外部化する、というのもありかもしれない。

中村氏:政権として、この行政は不要だから外部化する、というのは1つの見識だろう。10年前に反対した理由は2つある。1つ目は、規制と振興の分離は無理ではないかという点。よい例が1つでもあれば教えてほしい。2つ目に役人に対する不信、役所や役人のやっていることは危ない、という不信感がある。手放したら好きにされるのでは。このおじさんたちがごそっと独立するというのは、腑に落ちないのでは。ならば、政治主導で「規制緩和しなさい」「透明にしなさい」「情報通信法を作ろう」が今はいいのではないか。

金氏:中村先生は、先ほどのプレゼンでも、官僚主導のものから生まれる問題点を指摘されていた。官僚を独立させると、彼らはやりたい放題になるという話。今の段階よりまし、というのは佐々木さん。

岸氏:上に民間人を入れるというのは。

中村氏:それは組織論ではなく、人事論。

佐々木氏:やれないからこそ、総務省解体。そっちにもっていく。

中村氏:それは行政機能を緩めろ、という話か。

ディスカッションTOPに戻る

■大切なのは「国のかたち」

池田氏:民主党の言う「国のかたち」の議論なしにはできないこと。鳩山さんの議論のうち唯一正しいのは、明治憲法のころから続く、三権が官僚に集中している、という議論だと思う。僕の結論は「日本版FCCはいらない」。アメリカで問題になっているのは、FCCの官僚のレギュレーションを、司法の紛争処理として皆に見えるよう議論しろ、という話で僕はそれに賛成。
一昨日、BPOの面白い資料が出た。里中真知子の漫画入りのレポートで「僕たちもすごく悩んでいる」という内容。BPOは最近、すごく頑張っている。司法的な機能を民間人の自主規制でやろうというもの。せっかくああいうものが出ているのなら、その仕組みを大事にしたほうがいいと思う。

中村氏:大賛成。司法と立法の力を弱めて、バランスをとることが今、一番大事なこと。佐々木さんの言うように、透明性を高めることも。どうすればできるのかというと、政治主導しかないのではないかと思う。この政権は本当にやってくれるのか。

岸氏:政治主導がいいのか、と言う問題はある。政治家が駄目なら曲がってしまう。だが官僚は選挙で選ばれていない。司法で決めると、不安定性が増す。また、訴訟が起こると、司法が決めるまでの間は動かない。最適解は作りづらい

佐々木氏:政治主導は流行り言葉になっているが、政治家がすべての分野の専門家ではない。詳しくない政治家、詳しい霞ヶ関。今までは詳しい霞ヶ関が全て意思決定してきたが、それはおかしいよね、となった。政治主導になったら、政治家が全て決めなければならないのか。それは無理。政治家・霞ヶ関のどちらか一方だけが決定するわけではなく、もう少しバランスが取れた、ステイクホルダーが参加する意思決定が大事では。そのグランドデザイン、再構築がFCCの議論につながっているのでは?

岸氏:言うのは簡単だけれど、実現するのは大変。僕は政治にも行政にもいたが、本当に難しい。

佐々木氏:ある程度プロセスを可視化し、専門性が高い人が議論するのはありだと思う。

中村氏:池田さんの「国のかたち」という話なのだろう。大統領制ではない日本で、アメリカのように、二十いくつの独立行政委員会を作るのか。それが日本にそぐうのか。もう1つ、国家行政としてこの柱が必要、というのも大事だと思う。ふざけた話のように「文化省」というのを出したが、商売・教育・インフラの3つで国を作っていくというのは、非常にわかりやすい。

金氏:中村先生がおっしゃるように、国にとって重要なものと、行政の役割を一致した形で捉えているか、その辺を議論したい。また、司法に移す、公取に移すという話があった。
振興が大きいという話もあった。これまでのITC政策について、規制の話の前にしておきたい。

池田氏:それも10年前の省庁再編の時に議論されたもの。「日本は途上国ではないので、国が指図をするのはやめ、行政は最小限度の制度設計をしてあとはマーケットに任せる」という形があったが潰されてしまった。10年前の「振興政策から手を切るべき」という主張は良かったと思う。

ディスカッションTOPに戻る

■振興と規制は切り分けられるか

國領氏:振興を切り分けられるのか。例えばワイヤレスで何かやりたい、という時に多いのは、やってよいことは何、やっていけないのは何、という話。総務省に売り込んで研究会を作ってもらうのが一番良いが、立法に近く結果的には振興策になっている。そこを切り分けられるのか。絵に描いた餅になるのでは。

岸氏:裁量行政を続けるのが本当に良いのか、反省すべき点だと思う。分けようと思った時、ある程度ロジカルにできるのかどうか。分ける価値はあるのでは。

中村氏:規制は一色だが、振興はバラバラ。産業振興はやらなくてよいが、国としてやったほうがいい振興もある。技術開発、教育の整備、消費者保護のリテラシー教育。それは行政需要として出てきている。

岸氏:それは振興というより、市場の失敗をどう埋めるのかではないか。

池田氏:ターゲティング政策は失敗に継ぐ失敗だった。それはやめよう、というのが10年前の議論。

岸氏:そこは賛成している。民間の甘えを無くすために、振興は最小限にするべきだと思う。技術開発は必要だが。

池田氏:ある財団が、各省庁の審議会の後にセミナーをやっている。すぐに定員まで集まるそうだ。人より早くわかれば、役所に陳情にいく手間がいらない。霞ヶ関の力は今でもある。

中村氏:事業仕分けをやっているが…。

岸氏:民主党としての政策がないまま、個別の費用対効果だけを見ての仕分けであって、政策、分野の査定ではない。

佐々木氏:仕分けの議論を公開することには意味がある。財務省のブラックボックスのほうが最適化される、と言ってしまったら終わってしまう。いったん大っぴらにやる、スタート地点という位置づけはある。

中村氏:1つのトライアルのモデル。今の組織スキームでも公開できることはあるのではないか。

佐々木氏:規制と振興が切り分けられるのか、それ自体、根本から問い直す時期では。この二択しかないのか。米国ではオバマ政権になってから、Gov2.0と言っている。池田さんが言ったように、何らかのプラットフォームを作ること。人が生きていく社会の基盤を作る…政府の役割は制度設計とプラットフォームの提供で、これは規制なのか振興なのか。 二元論ではなく、政府の役割に立ち返るべき。

國領氏:賛成。これから先の話を考えるのならば、失敗してもいいからやってみて、事後規制する、そんな大きな設計の考え方でいくのかどうか。2011年以降、色々なことが起こる。その時、割り当てるべきもの、作るべきルール、諍いの解決をどのような思想のもとにやっていくのか。そこが一番問われており、そこが落ち着けば、組織論は落ち着くところに落ち着く。

池田氏:国領さんが言ったとおり。電気通信の経済学を専攻しているが、この分野に蓄積はある。米国型の整合性のないタイプと、日本型の整合性だけのタイプ。英米法と大陸法、どちらかだけが優れているわけではない。例えば携帯電話は米国が負け、欧州はGSM統一の官僚主導が買った。インターネットのTIP-IPは、バラバラにやっていた英米型が勝ち、官民一致のISDNはこけた。FCCが力を持っていたらできなかったこと。全体としては、いい加減な英米型のほうが、技術開発の店舗が激しい時代には向いているのでは、というのが大雑把な議論。

金氏:振興と規制は区別が難しく、その曖昧さが現状を作った。振興政策がいらないという議論はあるが、ある省庁では振興が規制よりずっと大きい。振興は審判のようなもので一貫性のある仕組み、中立性が大事。概念的レベルから議論すると明確にわかれるが、実務的にはどうなのか。振興とはなにか、規制とは何か。この機会に議論をしておきたい。

池田氏:僕は、十年前の規制改革会議で一回結論は出たと思っている。それがもう一度巻き戻っているだけ。

岸氏:規制改革会議の話。振興と規制は分け難いということだった。また、官僚は何で評価されるのか。権限を増やすか、予算を増やすか。予算は振興で、権限は規制。法律や権限が規制。評価され、役所も嬉しい。天下りも作れる。

金氏:規制を果たしているから、振興予算を確保しやすい、ということはないか。

岸氏:準拠がないと無理。根源は設置法が書き方はいっぱいある。拡大解釈で振興にしている場合も多い。

中村氏:僕は、金さんの考え方は良いと思う。規制と振興を分けてみる。総務省がやっていることはどうなのか、を考えてみる。国際戦略局は振興、リテラシーは振興にも規制にも分けられる…というように。結果は、2対1か、1対1か。問題はそれが二重行政になること。

金氏:振興と規制を分けると非効率になるのではという懸念があるのでは。逆に、分けることで規制の透明性が高まる。

中村氏:なぜ分けると透明になるのかが理解できない。それは「透明にせよ」と言うことによって実現するのではないか。日銀は独立して透明性が高まったのか。

金氏:プロセスの改善か、組織をいじるのか。独立委員会にする際に、透明性を高めるための設計ができるのではないか。同じ人間には限界があるのでは。

中村氏:例でもいいから教えてほしい。組織を独立したから、このように透明になった。ということを。

國領氏:例えば光ファイバー。ある程度国策でやったほうがいいと、NTT、自治体、いろいろなパターンがあったが、国策で実現してきた。出来たものを、公平に競争的に使えるようにするかという点では、NTTに対しては投資を要望した分、負い目がある。価格の開放がなされないこと。ジャッジするのは、そのあたりの匙加減をやった人とは別の人でないと、というロジックだと思う。

池田氏:アメリカでも議論されている部分。ロビイングの力を和らげるためにFCCをやめて…という話。日本ではNTTに対して似たところがある。NTTにあれだけ借りがある役所が、規制できるわけはない、というのは理解できる。しかし、テレビに関しては全くそれがない。
官僚がやるか、司法がやるかに解はない。NTTの件なら公正取引委員会もある。公取は情報通信に手を出したがっているのに、他の機関を使っている。総務省の中にやりたい人がいるなら、公取に情報通信部門を作ったらどうか。

中村氏:透明性という点では、前回話題の電波オークションは導入により、現行の組織の不透明さが透明化するというスキーム。組織を独立させれば確保できるものではない。
2つ目に独立論。総務省の行政監査だが、NTT行政がおかしいのなら、その行政監査を外部化、拡大する。会計検査院がその機能を負い、指摘するだけでなくパワーも持たせる。事業仕分けより重要ではないか。公取もいい。
3つ目に規制と振興の分離だが、やるなら全ての省庁で、だと筋が通る。霞ヶ関の役所を倍にする、というのを考えてもいいだろう。
あとは、振興以外の利用者行政、保護をどう分けるのか、という問題がある。

岸氏:振興と規制が一緒だと弊害もある。例を挙げると、資源エネルギー庁。振興も規制もやっているが、スマートグリットを真剣にやると、電力の完全自由化に繋がる。規制を持っていると、振興もうまくできない。一緒だからネガティブに働く事例はある。

池田氏:この問題、組織いじりより何をやるかを議論したほうが良い。FCCは電波を恣意的に割り当てる機関だった。電波は放送業界、有線はAT&Tという敷居を勝手に設けてきたため、有線と無線の世界に競争がもたらされず、携帯の発展も遅れた。90年代に携帯にも割り当てられるようになり競争が生まれ発展した。
無線通信のスピードが上がると、NTTの光ファイバーと競争できるようになる。面倒な規制はやめ、無線通信にたくさん帯域をあたえたらどうなのか。

ディスカッションTOPに戻る

■ビジョンと中立で具体的なアーキテクチャの重要性

金氏:ここからは会場のみなさんに質問をいただきながら進めたい。

質問者1:振興か規制かという話だが、競争政策はどちらに分類されるのか。競争政策にFCCはどう踏み込むのか。前例があれば教えて欲しい。

池田氏:競争政策は規制の1つ。公取委の競争政策の権限は情報通信にも及んでいる。二重行政になっている。周波数割り当てという特殊業務があったから惰性で続いてしまっている。独立行政委員会を作るより、全体を統括する機能を持つ公取委がある。しかし彼らには現在ノウハウがない。総務省から情報通信に詳しい人が行ったら良いのでは。

中村氏:僕も通信の競争政策は規制だと思う。どんな手段で競争を促進するのかを示しているのが、電気通信規制法という法律なので。問題は、行政目的は何なのか、ということ。競争が第一のプライオリティではない。全国のユーザーが安価に太いアクセスを確保するというのが上位にあり、それから規制法があり、ユニバーサル基金をつくるなどの振興がある。全体目的と手段とのマッチングが大切だと思う。

國領氏:質問は、全国津々浦々に行き渡る、という目的が上位にあり、公正な競争が二の次になっている、という指摘なのでは。予定調和的に言わない方がいいのでは。

金氏:ブロードバンド普及促進という目的には誰も反対しない。ある手段は介入しないもので、ある手段は行政が主導をとるものだ。中村先生と國領先生とは、その度合いが異なる。

佐々木氏:競争の目的が、時代によって移り変わって来ている、というのが大事なのでは。2000年頃は、ブロードバンドを全国津々浦々に、で良かった。NTT再々編の問題もそうだが、KDDIやソフトバンクは下位レイヤーで、上位レイヤーに出て行かれるかどうかが生き残りには大事。国際競争力の点から考えると、日本はインフラ競争、国内で食い合っていていいのかと思う。今の競争の目的は、ブロードバンド普及ではなく、その上でどう戦うか。もはや規制ではない。

岸氏:市場の失敗という話。その時の政府の関わりだが、振興的に関わるのは、採算が合わないところにお金を出すこと。アメリカでは市場の中でのルールで、赤字部分は利用者が負担する。その2つが今、混ざっている状態なのではないかと思う。
市場によって変わるし、企業、産業ごとに特性は異なる。競争政策はいろんな形で利用されてきた、振興手段としても使われてきた。それが政策現場のリアリティ。

金氏:振興機能は残ると思うが、ICT関連の振興政策のあり方は、中村先生の統合の議論に合意ですか。

池田氏:FCCにはかつて「コンピューターコミッション」があったらどうか、という議論があった。世界中のコンピューターの9割がIBMだったころ、IBM分割命令が出ていたら、それはコンピューター業界にとって良いものだったのか。結局、IBMを倒したのはFCCではなくビルゲイツ。基本的に、そういうものでは。プラットフォーム競争なのだと思う。
政府はターゲティング政策をやる必要はない。農水省なんてターゲティング政策しかやっていない。戦後しばらくの間、みんなが飢え死にする頃には大切だったが、省庁にすると役目が終わっても予算を使うことになる。制度設計にすべきだ。

國領氏:議論が古いのでは。これからは、電波利用料をどう裁いていくかなど、中立性を持った具体的なアーキテクチャが必要になる。どこに国の資金を入れるのか?どんな規制か?フェアなやり方は?どこを普及させていくか?は、政策なしではできない。ビジョンを持たなければ。
2001年の話は古い。これから先、どういう思想でどういうアーキテクチャで行くべきなのか。そのスタンスを決めたところで、振興と規制がぶつかる局面はあるだろう。それをどんな手続きで裁いていくかには、思想が必要になる。ターゲット政策の時代は終わったと言っても、これから来る大波に対処できないのでは。

池田氏:行政の裁量による「指導」ではなく、なるべくルールベースの制度設計による行政に移行すべき。極端なリバタリアンのように、全くいらないとは思っていない。もう少し制度設計をしっかりして、もう少し個別の官僚の裁量を小さくしていく。

岸氏:どの技術が伸びる、という判断を役所がすべきではないと思う。文化庁は振興策をやっていない。保護ばかりしたら文化も腐る。正しい振興策、競争政策を行わないと。振興策自身も進化しなくては。

佐々木氏:相変わらず振興・規制の二元論に戻ってしまうのは何故なのか。金先生の思い入れがあるのかもしれないが、それは違う。例えば個人情報保護法。ライフログや顧客情報の企業の再利用の要望は強い。しかし規制政策以上のものはない。このように使いましょう、というガイドラインが提示されていない。
プライバシーや個人情報の使い方、ガイドラインは、規制でも振興でもない。まさにGov2.0。使ってよい、というプラットフォームを提供するという枠組みを考えるべき。

金氏:ガイドラインというのは規制政策では。

岸氏:僕もそう思う。

佐々木氏:個人情報を民間でも使っていい、というのは規制政策になるのか。ガイドラインという言葉だと規制政策のように聞こえるが、プラットフォームは規制政策でも振興政策でもない。

中村氏:2つ申し上げたい。ターゲット政策や事後規制について。自分が役所にいた15年前に比べれば結構良くなった。電波の議論も随分オープンになったなぁと思う。当時の案のように独立させていたら、こうなっていたのかどうか。ターゲット政策もずいぶん減った。ハイビジョン、ISDNもなくなった。スタンスを置いている。もっと規制緩和していかなきゃとは思うが、組織を変えたらどうなのかという不安はある。
規制と振興を分けて、調整コストを上回るメリットはあるのか。こんなによくなったという事例があるなら聞きたい。
問題は、パーソナル情報を含む個人情報の二次利用の話を総務省と経産省の両方でやろうとしていること。青少年保護もまた縦割り行政が再燃しかかっていることだと思う。

池田氏:規制か振興かより、それ以前の目的関数が大事。民主党はこれから何をしようとしているのか、情報通信行政がはっきり見えてこない。明治以降の、官僚にすべてが集中するかたちを変えたいという鳩山首相の考えに賛成する。国のかたちをかえるために、情報通信行政では何が必要か?行政がもっている権限をもう少し司法にわけたらどうか?そうした形に沿って考えると、制度設計が出てくるのが本筋。ぽこっと出ると、枝葉議論になってしまう。

中村氏:インデックスでやるべきことが示されている。優先順位をつけて、何年くらいの間に、どこまですすめるのか。やるべき仕事ははっきりしているのでプライオリティをつける。

岸氏:政治家はそれほどロジカルに考えられない。枝葉から本質に向かうこともある。小泉さんもそうだった。前向きに考えられるのであれば、FCCを考えることが、行政に向かい、国のかたちを考えるきっかけになるかもしれない。

金氏:三部作を考える際に、国のかたちを議論するという問題意識はあったが、日本の審議会報告書にはしっかり書かれている。それを蒸し返すより、共有化することが重要ではないかと思い、国家ビジョンは削り枝葉に入った。ここから本質に入ると理想的だと思う。

國領氏:まずやってみて司法や調停という機能を強化するか、計画してやっていくか、では組織は違う。まずどの方向を向くかを考えないと組織の形はみえない。

質問者2:前回のTwitterのコメントに「技術者がいれば」という話があった。技術の面から発言したい。携帯電話が出現し、インターネットが普及するまでの時間、世界に物が出て広まるまでの時間が非常に早くなっている。しかし立法のプロセスは変わらない。法律や制度が技術についていけない。プロセスが不透明だから、あるグループからは不公平、不透明にみえる、というのが根源にあるのでは。技術の進歩のスピードを加味すると、議論は変わるのか。

中村氏:技術の進歩に霞ヶ関がついていけないのは情報通信だけではない。金融や建築も同様。

國領氏:先ほどまさに、池田さんと私が議論した点。調停など、事後調整機能をすごく調整しないといけない。そうではなく、計画経済的にきちっとプランニングすべき組織もある。そこのところをきちんと考えてからじゃないと、どうするかに繋がらない。

池田氏:今、具体的に日本はどちらを向けばいいかの議論。ITは金融と似ている。金融は、ビッグバンにより事後調整を行うようにした。しかしモデルとしていたアメリカがこけた。官僚主導に少し戻ってきている。僕は、官僚主導は100%駄目とは思わない。

ディスカッションTOPに戻る

■技術の進化と省庁の役割

質問者2:かなりを市場に任せるというのが、技術から見ていいと思う。今の総務省の体制でできるのか。できるのなら、それでかまわないが。

中村氏:コンセンサスとして、霞ヶ関は技術の進歩についていけない。全領域でそう。金融もそう。建築も構造の知識についていけない。技術屋さんをもっと入れればいいのか、研究会がいいのか、組織論かはわからない。

質問者3:イノベーションを起こす人は、ルールを破る可能性がある。既得権益を持っている人にとってよくないことがあるとして、イノベーションを起こす人が邪魔者扱いされがち。活躍させるためにはどうすればいいか。
制度設計の中でどう考えるか?が鍵かな、と思っており、技術のイノベーションもその話につながっている。

池田氏:イノベーションを促進するためには、行政が余計なことをしないのが一番大事。各国の産業政策を調べると、どの国でも、シリコンバレーをやりたがっている。しかし失敗する。

國領氏:たとえば電波コモンズを作るのは?

池田氏:それはありだと思う。ターゲティング政策はせず規制はする。行政が期待するのは、技術のイノベーション。ビジネスはだまし討ちで、頑張って乗り越える領域。そこには行政は関与しない。

佐々木氏:ITゼネコンという言葉がある。国の予算をぶん取り、そこにお金に入る。国が事業をするとき、そこにぶらさがる。イノベーションがなぜ起きないかの前に、いびつな形の金の流れを議論すべきではないか。

池田氏:やめることが大事。そこで流れ込んでいる金を別の方向に振り分ける。政府調達というのは、制度設計。体力のないスーパーコンピューターを作っている日本。そんなおかしな政策はやめることだ。政府が潰れそうな民間会社の面倒をみるのは基本的にやらないほうがいい。

中村氏:今日のセッションで本当にいいたかったのは、組織論ではなく人事論。どこに誰をはりつけるほうが大事だと思う。その前に、どんな政策をやるのかの政策論がある。

國領氏:今日の議論でほぼ一致したのは、組織論は枝葉の話という点。根幹の議論をしないと。私も感想は岸さんに似ていた。枝葉の議論に、はっと反応した伊知哉さんがいた。なぜ伊知哉さんはそんなに怒っているの?を考えると本質が分かるように思う。
枝葉の議論をしたほうが、世の中が動くというのも、これまでの経験で感じていること。FCC作るにしても作らないにしても、魂が入っているものを作ることが大事。しつこいけれど、これから3,4年、捌かなければいけない話が多い。現状のごちゃごちゃに突っ込むと危ないなと思っている。そういう意味では、スタンスをはっきりさせるために議論で深めていきたい。

金氏:前回が予想を裏切って平和的に終わったので、僭越ながら出しゃばったモデレーションをした。来週はNTT再々編問題。センシティブな議論だが、喧嘩別れしてもいいと思っている。来週もよろしくお願いします。

ディスカッションTOPに戻る